心を動かす、ちいさな場所のちから
20年ほど前、ある一篇の詩と出会いました。
それは『暮らしの手帖』に掲載されていた「台所宣言」という詩です。
台所は暮らしの工場です。
台所は暮らしの心臓です。
…と続きます。
はじめて読んだ時、この詩に深く心を打たれました。
そして今、私たちが手掛けるフルオーダーキッチンの原点を、あらためて思い出させてくれます。
ハートハウスのはじまりは、ひとつの「台所体験」から
ハートハウスは今年で39年目を迎えます。
その原点には、創業者である母の強い想いがありました。
東京出身の母が嫁いだ先は、田舎の伝統的な住まい。
そこには北側に位置し、寒くて暗い、そして家族からも離れた“孤立した台所”がありました。
料理をつくっては居間まで運び、また台所に戻る。家族との会話もない、ひとりきりの空間。
「こんな台所は、絶対に嫌。」
「お母さんが料理をする場所こそ、家族の近くでなければならない。」
──その想いが、約40年前に芽生えたキッチン専門店ハートハウスのはじまりです。

今でこそキッチンは住まいの中心として設計されることが多くなりましたが、当時はまだまだ“台所は裏方”という時代。
母は時代に先駆けて、「暮らしの真ん中にキッチンを」というビジョンを持ち、それを形にする仕事を始めました。
キッチンは「つくる場所」ではなく「つながる場所」
私たちが日々手掛けているのは、単なるオーダーキッチンではありません。
お客様のライフスタイルや思いに寄り添い、「暮らし」をかたちにする仕事です。
キッチンは暮らしの力を生み出し、家族の心が通い合う大切な空間です。
そこでつくられるのは料理だけではなく、家族の会話であり、思い出であり、未来をつなぐ時間なのです。
ハートハウスはその空間を「食談室」と謳っています。
「責任者はあなた」──キッチンに立つすべての人へ
この詩の最後にある一節、
すぐれた責任者 それがあなたです。
この言葉は、キッチンに立つすべての人への温かなエールだと思います。
家族の健康を思い、日々ごはんをつくる。
忙しい朝も、ゆったりとした夜も、キッチンがあるから暮らしは回り続けます。
そしてその場所が、明るく、心地よく、安心できる空間であってほしい。
ハートハウスはその想いを胸に、キッチン空間を、一つひとつ丁寧にかたちにしてきました。

明日をつくる、台所から
キッチンがただの作業場ではなく、心が通い合う“暮らしの中心”となるように。
そしてそのキッチンが、家族にとっての温かい記憶となって残っていくように。
これからも、ハートハウスは“暮らしを動かす場所”を一緒につくり続けていきたいと思います。
