「包丁キャンセル」って知っていますか?

最近、「包丁キャンセル」という言葉を知りました。
料理をするときに、包丁やまな板をできるだけ使わない。

キッチンばさみを使ったり、カット済みの食材を使ったり、電子レンジなどを上手に活用したり。
これまで「料理をするなら、包丁とまな板を使うのが当たり前」と思っていた私にとっては、少し新鮮な言葉でした。

でも、よく考えてみると、
「料理をしない」のではなく、「料理の中の面倒なことを減らしている」
ということなのかもしれません。

実際、私自身も忙しい時は、包丁やまな板を出さずに調理できたらいいなぁ、なんて思うことがしばしばあります。

料理そのものは嫌いではなくても、包丁とまな板を出して、使い終わったら洗って、作業台もきれいにして……と考えると、「今日はできるだけ簡単に済ませたい」と思う日もあります。

そう考えると、「包丁キャンセル」というのは、料理をしなくなるということではなく、自分の負担を少し減らしながら、料理を続けていくための一つの方法なのかもしれません。

今回は、この「包丁キャンセル」という言葉から、これからのキッチンのあり方について考えてみました。


「包丁キャンセル」って、どういうこと?

2026年、キユーピーが発表した「えがおの食生活研究」では、「キャンセル調理」という新しい調理の考え方が紹介されています。
これは、
忙しい日常の中で無理なく料理を続けるために、特定の調理工程や道具をあえて使わない、という合理的な工夫のこと。
調査では、29歳以下のZ世代で「包丁を使わない料理」を取り入れている人が14.6%、30~45歳のY世代では12.4%となっており、若い世代ほどその傾向が見られました。

つまり、

「包丁を使わない=料理をしない」 ということではありません。

むしろ、

「料理はしたい。でも、できるだけ無理なく続けたい」という考え方なのではないでしょうか。


「料理の手間を減らしたい」は、決して悪いことではない

料理をするとき、食材を切るだけでも、

包丁を出す。

まな板を出す。

食材を切る。

使い終わったら洗う。

まな板も洗う。

作業台も拭く。

一つひとつは小さな作業ですが、毎日のことになると、その積み重ねは意外と大きな負担になります。

だから、

「今日は包丁を使わない」

「カット野菜を使う」

「キッチンばさみで済ませる」

という選択があってもいい。

私は「包丁キャンセル」という言葉を知って、そんなふうに思いました。

毎日完璧に料理をすることよりも、無理なく料理を続けられること。

その方が、毎日の暮らしにとって大切なのかもしれません。


では、キッチンも変わっていく?

ここで、私たちが考えたのが、

「これからキッチンは、どう変わっていくのだろう?」ということです。

キッチンというと、

「コンロがある」

「シンクがある」

「作業台がある」

「収納がある」

というのが当たり前。

でも、本当にそれがすべての人に必要なのでしょうか?
料理の仕方が人によって違うのであれば、キッチンの形も人によって違っていいはずです。


「コンロのないキッチンが欲しい」と言われたことがあります

以前、お客様から、

「コンロのないキッチンが欲しい」と言われたことがあります。

最初に聞いたときは、

「コンロがないキッチン?」  と、少し驚きました。

でも、よくお話を伺ってみると、その考え方がとても面白かったのです。

そのお客様が求めていたのは、コンロをなくすことそのものではありませんでした。

キッチンの大きな作業スペースを、もっと効率よく使いたい。ということだったのです。


料理をするときだけ、卓上コンロを置く

そのお客様が考えていた使い方は、とてもシンプルでした。

料理をするときには、必要な場所に卓上コンロを置いて調理する。

そして料理が終われば、卓上コンロを片付ける。

すると、大きな作業台は、ダイニングテーブルとして使える。

そこで家族と食事をすることもできる。

さらに、食事が終わって卓上コンロを片付ければ、ワークスペースとして使うこともできる。

仕事をしたり、パソコンを使ったり、ちょっとした作業をしたり。

一つの場所を、用途に合わせてフレキシブルに使うという発想でした。


「なるほど。キッチンはもっと自由でいいんだ」

そのお話を聞いたとき、「なるほど」と思いました。

私はそれまで、キッチンは「料理をするための場所」という考え方がどこかにあったのだと思います。

でも、そのお客様の考えを聞いて、

キッチンは、もっと家具のような存在になってもいいんだ。と感じました。

料理をするときはキッチン。

食事をするときはダイニング。

コンロを片付ければワークスペース。

そう考えてみると、一つの場所にいくつもの役割を持たせることができます。


キッチンは、もう「料理だけをする場所」ではない

今の住まいでは、キッチンがLD空間の中に溶け込んでいることも珍しくありません。

キッチンとダイニング、リビングが一つの空間としてつながっている。

そう考えると、

「ここはキッチン」
「ここはダイニング」
「ここは仕事をする場所」

と、きっちり分ける必要もないのかもしれません。

食事を作る。

食事をする。

家族と話す。

仕事をする。

子どもが勉強する。

趣味を楽しむ。

その時々で、同じ場所を違う使い方をする。

そんなキッチンがあっても、決しておかしくありません。


「使いやすいキッチン」の答えは、人によって違う

今回、「包丁キャンセル」という言葉を知ったことと、以前のお客様からいただいた「コンロのないキッチンが欲しい」というお話。

一見すると全く違う話ですが、私には共通しているように感じました。

それは、

「今まで当たり前だったキッチンの形に、自分の暮らしを合わせなくてもいい」

ということです。

包丁を使うことが好きな人もいます。

食材を切るところから料理を楽しみたい人もいます。

一方で、できるだけ短時間で料理を終わらせたい人もいます。

カット野菜や冷凍食品を上手に取り入れたい人もいます。

料理は好きだけれど、後片付けはできるだけ減らしたい人もいます。

そして、キッチンを料理以外のことにも使いたい人もいます。

どれが正解ということではありません。

その人にとって使いやすければ、それがその人の正解なのだと思います。


キッチンを考えるとき、「何を入れるか」だけではなく「どう使うか」を考えてみる

キッチンを計画するとき、

「どんなコンロにする?」

「食洗機は入れる?」

「収納はどのくらい必要?」

「作業スペースはどのくらい必要?」

と、設備やサイズから考えることが多いと思います。

もちろん、それも大切です。

でも、その前に、

「私は、このキッチンで何をしたいんだろう?」

と考えてみるのもいいのではないでしょうか。

料理をする時間を大切にしたいのか。

できるだけ家事を効率化したいのか。

家族と一緒に料理をしたいのか。

料理をしない時間も、この場所を活用したいのか。

そこを考えていくと、必要な設備や収納、作業スペースの形も変わってくるかもしれません。


これからのキッチンは、もっと自由になっていい

「包丁キャンセル」という言葉をきっかけに、これからのキッチンについて考えてみました。

包丁を使うことが良い、使わないことが良い。

コンロがあることが普通、コンロがないのは変わっている。

そんなふうに決めつける必要はないのだと思います。

大切なのは、

「自分たちの暮らしにとって、どんなキッチンが心地いいのか」

ということ。

料理をする場所であり、

食事をする場所であり、

家族が集まる場所であり、

ときには仕事をする場所でもある。

キッチンが家具のように暮らしの中に溶け込み、その時々に合わせて使い方を変えられる。

そんなキッチンが、これからはもっと増えていくのかもしれません。

そして私たちも、これまでの「キッチンはこういうもの」という固定観念にとらわれず、

「このご家族なら、どんな使い方が一番心地いいのだろう?」というところから、キッチンを考えていきたいと思っています。

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